鶏卵の役割は、もちろん卵の風味をワッフルにもたらしてくれると同時に、生地にボリュームとキメの細かさを与えてくれる重要な素材です。また、水分とバターをなじませる役割も果たしています。
卵はとにかく新鮮さが命です。なによりも新鮮でなければ、味はもちろんのこと、最も大切な衛生面にも重大な影響をもたらします。
しかし、もちろん私たちのワッフルに使う以上新鮮だけでは足りません。
輸送に時間がかからない場所の養鶏場で、かつ安心・安全な卵がどこかにないだろうか・・・?
そう考え始めたとき、ピンとくるものがありました。
そういえば1週間ほど前、友人に卵の頂き物をした・・・あの卵はかなりおいしかったが一体どこの卵だったか・・・。
無造作においてあった卵の空き箱。そこには「常春の南房総市三芳産 百姓屋敷じろえむ」の文字。 地図をみれば、とても近い!しかも、百姓屋敷じろえむは、有機米や有機野菜を使った料理を出すレストランでもあったのです。さっそく翌日の昼食を予約しました。
ナビが無ければ迷ってしまいそうな田舎道。車で走ること10分で着いたその場所は、昔ながらのまさにお屋敷。大きな茅葺の長屋門が私たちを出迎えてくれます。
通されたのは古民家の母屋にある広い居間。高い天井と大きな神棚。黒く太い梁。梁を伝う電線と白い磁器でできた碍子。ご先祖様の写真と仏壇。座布団と畳と扇風機。外から聞こえる虫の声と・・・鶏の声!
そしてそこに流れる静かで贅沢な時間。
運ばれてきた御膳には、こだわりが詰まっていました。
お釜で炊いた天日干し無農薬無化学肥料米、国産無農薬大豆と自家製糀(こうじ)のお味噌汁、近くの畑で取れた季節の無農薬野菜とおばあちゃんのお漬物。
そして・・・ふわっふわの卵焼き。これを食べた瞬間に、もう決めていました。
ここで生まれた卵を使いたい、と。
14代目治郎右衛門(じろえむ:家を特定するために使われている屋号です。)の稲葉さんは、1973年から早くも無農薬・無化学肥料の有機農業をはじめ、いままで卵や米、果樹、野菜を作ってこられたそうです。
そのこだわりの卵は、自由に走り回ることのできる飼育方法である平飼いの雌鳥から生まれます。
しかも、雄鶏と一緒に暮らしているので、有精卵なのです。
与えるエサは、米ぬか、とうもろこし、大豆、魚粉など全て飼料は自家配合されています。ビタミン、ミネラルをたっぷり含んだ緑の草も与えておられるそうです。
もちろん、遺伝子組換え飼料、ポストハーベスト農薬が使われた飼料、黄身に色をつけるための着色料を含んだ飼料や抗生物質などの薬(鶏たちを病気にさせないため、病気でもないのに抗生剤を食べさせる養鶏場があります)は一切与えてられていません。
また、卵の呼吸を妨げず鮮度を落とさないために無洗浄で販売され、その代わり徹底的に衛生管理がされています。
このこだわりの卵は、私たちのワッフルに卵のコクと風味、それとふんわり感を与えてくれました。